最後に会ったのは確か去年。用件だけ言って「久しぶり」の言葉もない。相変わらず淡白な性格は少し俺に似ている。

俺はそんな絵里奈にあることを依頼していた。

――ソニリアの内部調査を依頼したい。

自分の身内を疑うようなうしろめたさはあったが、俺にはどうしても納得のいかないことがあった。

木崎登。あいつは怪しい。

そう思い始めたのは、木崎が昇進試験に失敗してからだった。離婚が成立して精神的に不安定になっている話は聞いていたが、その割には業績がうなぎ上りにアップして仕事に精を出しているかのように思えた。普通、昇進試験に失敗すれば意気消沈して仕事にもマイナスに影響を及ぼすものだが、彼の場合は逆だった。

初めはもう一度昇進試験を受けさせて欲しいという上層部へ媚を売るためだと思っていた。しかし、俺の中で暗雲を拭い去ることはできず、社長である父に許可を得て、ソニリアに内部調査を入れたのだった。