「……それで、会社のほうはうまくいってるの?」

『ああ。これも最上君のおかげだ』

今日も無事に仕事が終わり、ほっと一息つきながらエントランスを歩いていると、父から電話がかかってきた。

部屋はまだ真っ暗で最上さんはまだ帰宅していないようだった。会話をしながら電気をつけて、冷え切った部屋に暖房を入れた。

先日、最上さんがSAKAIに出資してくれたおかげで、傾きかけていた経営もなんとか少しずつ持ち直し始めているようだ。そうは言ってもまだ多額の負債を抱えているのには変わりなく、ガラスの上を歩いているといった状況だ。

『最上君は元気か?』

「うん。三日間出張で今日帰ってくることになってる。今朝も昼もメールが来たよ、ほんと心配性っていうか……」

『そうか、まるで夫婦みたいじゃないか』

なんで今の会話でそう思うのか不思議だったけれど、私と最上さんが仲睦まじくしていると父も嬉しいらしい。それはそれで私も嬉しいけれど、内心複雑だ。