彼女が店に現れたとき、俺はすぐに酒井凜子だと気がついたが、彼女のほうはまったく俺の素性を知らない様子だった。だったら、このまま身元を明かさずに様子を窺おう。センター長だと知れてしまえば、遠慮してフランクに話ができないのでは面白くない。

名前を尋ねたとき、彼女は酒井凜子と名乗らなかった。嘘をつかれたのは正直少しがっかりだったが、逆にその用心深さに感心してしまった。

必ず彼女を手に入れてみせる。

思い通りにならないほど燃えてくるのは俺の性分だ。自分の言いなりになるような女はつまらない。しつけ甲斐のある女じゃなければ面白くない。そう思っていたけれど、酒井凜子にどんどん堕ちているのは……俺のほうだった。