こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~

『う~ん。この件どうするかな』

あの会議が終わってコールセンターへ戻ると、父から電話がかかってきた。缶コーヒーを買って誰もいない休憩室の椅子に座る。

「父さんは社長なんだから、決定権はあるだろ」

『それは私に最終決定を下せと言うことか? 貴斗はどう思ってるんだ?』

父は社長のくせに優柔不断なところがある。けれど、それでも会社が成り立っているのだから不思議だ。

「俺は全回収すべきだと思う。SAKAIの娘が言ってたみたいにな」

そういうと父は電話の向こうであっはっはと笑った。俺の答えに意外だといった様子を見せず、笑っているということは結局父も同意見なのだろう。

「彼女が言うように、一度失った信頼を取り戻すのは並大抵のことじゃない」

すると父は同情するように小さくため息をこぼした。俺がマックスに裏切られたことは父も知っている。きっと、そのことを思い出させてしまったとでも思っているのかもしれない。