その時、ちょうどメーンの肉料理が運ばれてきた。赤ワインの和牛煮込みと説明を受けて、いつもならすぐに飛びつくところだけど、最上さんの話に耳を傾ける。
「離職の理由は様々だが、会社にとって大切な顧客とのやり取りの手違いは禁物だ。だから常に集中することが課せられる、体力的にも辛い。けど一番はやっぱりクレームの対応だな」
最上さんがナイフで肉を切る。力を入れずともすっと切り込みが入るのを見てすごく柔らかくてほろほろ肉だとわかる。最上さんが料理に手を付けたのを見て私もナイフとフォークを握った。
「電話越しだからな、顔を見て話してない分、強気な口調で理不尽なことをあれこれ言われて、この間なんか「てめー! いい気になってんじゃねぇぞ」って、罵詈雑言を散々聞かされた。誰でも精神的に堪えるだろ。仕事を始める前にこんなことを言うのもなんだが」
そう言って最上さんは明るく苦笑いした。
「最上さんは辛くないんですか? そんなこと言われて」
「俺はそんな軟じゃない。それに責任者がそんなことで疲弊してたら、立つ瀬がないだろ。あ、うまいなこれ」
上司に厳しい口調で怒られたことはある。それでもへこたれないでその時は頑張れたけど、見知らぬ相手からそんなふうに手厳しく言われたら……。
「離職の理由は様々だが、会社にとって大切な顧客とのやり取りの手違いは禁物だ。だから常に集中することが課せられる、体力的にも辛い。けど一番はやっぱりクレームの対応だな」
最上さんがナイフで肉を切る。力を入れずともすっと切り込みが入るのを見てすごく柔らかくてほろほろ肉だとわかる。最上さんが料理に手を付けたのを見て私もナイフとフォークを握った。
「電話越しだからな、顔を見て話してない分、強気な口調で理不尽なことをあれこれ言われて、この間なんか「てめー! いい気になってんじゃねぇぞ」って、罵詈雑言を散々聞かされた。誰でも精神的に堪えるだろ。仕事を始める前にこんなことを言うのもなんだが」
そう言って最上さんは明るく苦笑いした。
「最上さんは辛くないんですか? そんなこと言われて」
「俺はそんな軟じゃない。それに責任者がそんなことで疲弊してたら、立つ瀬がないだろ。あ、うまいなこれ」
上司に厳しい口調で怒られたことはある。それでもへこたれないでその時は頑張れたけど、見知らぬ相手からそんなふうに手厳しく言われたら……。



