こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~

「まずは乾杯だな」

シャンパンをグラスで注文するとすぐに運ばれてきて、いまだに夢見心地のままグラスをカチンと合わせた。

「この店、気に入ったか?」

「すごいですね。噂では色々聞いてた店だったんですけど……実際入ってみるとなんだか場違いな気がしてきました」

テーブルに置かれていたメニューを開くと、瞬時に閉じたくなるような値段のものばかりで気おくれしてしまう。

「遠慮するんじゃないぞ。あ、でも飲みすぎは駄目だ」

私には飲みすぎによる前科がある。それを言われて縮こまると、最上さんはふっと笑みを浮かべた。

傍からみると、私たちは紳士淑女に見えるだろうか。最上さんは御曹司なだけあって育ちの良さをうかがわせるような上品な仕草で思わず見惚れてしまう。これとって会話をする前に前菜、スープが運ばれてくる。焼き立てのパンも添えられていて、香ばしい匂いが食欲をそそった。