こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~

「ここって……」

最上さんに連れてこられた所は、都内でも有数の高級ホテルのフレンチレストランだった。よく雑誌でも取り上げられるような有名店で、特別な日だったとしてもなかなか敷居が高くて入れない。そんな店の前で私は呆然と佇んでしまった。最上さんが受付にいた女性スタッフに声をかけると、にこりとして店内に通された。

「予約してたんですか?」

「予約? そんなものはしない。ここのオーナーシェフと顔見知りで俺はいつでも来ていいことになっている」

顔パスってこと!? 予約だって滅多に取れない店なのに?

しかも通された席は東京の夜景が一望できる個室で、店内で食事しているお客さんたちもどことなく清楚で上品な人ばかりだった。

社長の息子だからこんな高そうな店でも簡単に入れちゃうのかな? 私とは全然違う。

最上さんとの身分の差を改めて感じてしまい、「やっぱり帰ります」と踵を返したくなる。

店内はコバルトブルーの絨毯が敷かれ、豪華なシャンデリアが天井からつるされていた。
テーブルには真っ白なクロスがかけられ、中央に柔らかな灯りをともした卓上ランプが置いてあった。シックな茶革の椅子に恐る恐る座ると、その落ち着いた雰囲気に、はぁと感嘆のため息が零れた。