「あの、今からどこに行くんですか?」
後部座席の隣に座って、何を考えているかわからない様子で窓の外を眺めている最上さんに尋ねる。
「お前の異動祝いだ」
「異動祝い? そんな、祝われるようなことじゃないんですけど」
本社からコールセンターへ異動したことは、私の中で左遷も同様だと思っていた。それなのに祝うだなんて、彼はどういうつもりなのだろう。「嫌味ですか?」そう言おうとして口を開きかけた時。
「まぁ。今まで本社勤めで花形の企画部にいたところをコールセンターに異動させられて腑に落ちない気持ちはわかる。けど、異動なんてものは誰にでもあり得ることだ」
「最上さんのせいじゃないですか」
説き伏せるようなことを言われてついムッとしてしまう。そんなふくれ面の私に彼はやんわり笑った。
「新しいことにチャレンジする機会を祝う。そういう体だ」
もう、また勝手なこと言って!
文句も言いたくなるけれど、先ほど絶妙なタイミングで助けられたのは事実だ。だから、今だけはしおらしく、最上さんに従うことにした――。
後部座席の隣に座って、何を考えているかわからない様子で窓の外を眺めている最上さんに尋ねる。
「お前の異動祝いだ」
「異動祝い? そんな、祝われるようなことじゃないんですけど」
本社からコールセンターへ異動したことは、私の中で左遷も同様だと思っていた。それなのに祝うだなんて、彼はどういうつもりなのだろう。「嫌味ですか?」そう言おうとして口を開きかけた時。
「まぁ。今まで本社勤めで花形の企画部にいたところをコールセンターに異動させられて腑に落ちない気持ちはわかる。けど、異動なんてものは誰にでもあり得ることだ」
「最上さんのせいじゃないですか」
説き伏せるようなことを言われてついムッとしてしまう。そんなふくれ面の私に彼はやんわり笑った。
「新しいことにチャレンジする機会を祝う。そういう体だ」
もう、また勝手なこと言って!
文句も言いたくなるけれど、先ほど絶妙なタイミングで助けられたのは事実だ。だから、今だけはしおらしく、最上さんに従うことにした――。



