こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~

「大丈夫か?」

先ほどのぞくっとするような険しい表情から、心配げな顔つきになって最上さんが言った。

「はい、すみません。見苦しいところをお見せして……助かりました。ありがとうございます」 

ドキドキと激しく打つ鼓動を悟られないように、私はそっと身体を離す。

「はぁ。やっぱりあいつ絶対ここに来ると思ったよ。どうせ待ち伏せでもしてたんだろ」

最上さんはやれやれと深く息づく。不倫相手だった人に言い迫られて、しかもそれを最上さんに見られるなんて恥ずかしい。
バツが悪くて俯いていると、最上さんがふっと笑った。

「そんな顔するなよ。俺もちょうど仕事が終わったところだったんだ。行くぞ」

「え? 行くってどこに……あっ」

否応なしに手を取られて思わず躓きそうになる。最上さんはいつだって強引だ。取った手を離さないまま、ずいずいと歩いて偶然居合わせたタクシーに乗り込んだ。