こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~

「すみません。私はもう……そういうことは終わりにしたいんです」

そう言って彼の横を通り過ぎようとした時、腕を掴まれた。

「離してください。それに、こんな往来でやめて」

「妻と別れることになったんだ」

え……?

『君とこういう関係になったからといって、家族を手放すことはできない』

『妻と別れる気はないことだけは先に言っておく』

私だって木崎課長と恋愛するつもりはなかったし、会うたびにまるで予防線のように言っていたくせに。

私は掴まれた腕を振りほどき、木崎課長を見た。よく見ると、奥さんと散々揉めたのか少し憔悴の色が顔に滲んでいる。

「それは私のせいですか?」

「違う! そうじゃない」

「じゃあ、奥さんと別れるから私と付き合おうってことですか?」

会社ではいつもキリっと仕事をこなしているけれど、こんなしょぼくれた木崎課長を見るのは初めてだ。彼は私の質問に答えることなくずっと黙っている。