「ちひろー!」
約束の場所にはちひろの姿があった。
黒いオフショルの洋服にショートパンツ。
高めのヒールのおかけでいつもより身長高く見える。
「やっぱりさ、ちひろって何着ても似合うよね〜。いるだけで様になるっていうか」
私の言葉にちひろは少し顔を曇らせた。
「んー…そうかな。」
ちひろは自分の見た目が好きじゃないらしい。
醜いって思ってるみたいだけど、こんなに可愛いのに勿体ないよ。
「まったく、自分の可愛さに気づいていないなんて罪だね。」
何となく、これ以上話を掘り返しちゃいけない気がして室内に逃げ込んだ。
扉をあけた途端に大音量の音楽が私の全身に刺激を与える。
久々の感覚にワクワクしてしまう。
とりあえず、お酒でも買おうかな〜。なんて考えていると、知らない2人組の男が声かけてきた。
「お!お姉ちゃんなんか一緒に踊らない?」
ナイスタイミングー。
男の耳打ちに、私も耳打ちを返す。
「いいよー!でもお酒ないから奢って欲しいな〜」
そう言うと「全然いいよー!」と快く了承してくれた。
ラッキー。
私はちひろに耳打ちをして、奢ってもらえることを伝えた。
私はビールを頼み、口に運ぶ。
あぁ〜美味しい!!
やっぱりタダで出来る飲み食いって美味しいよね〜。
私は約束通り男とダンスをして楽しんでいた。
「ねぇねぇ、この後俺の家にいかない?」
そう耳打ちして来た男に潮時かなぁ、なんて考えながらちひろの方を振り向く。
「あれ??ちひろがいない…」
振り向いたそこにはちひろの姿はなく、ちひろと一緒にいた男がお酒を2つ持ってキョロキョロしていた。
携帯を見てもなんの連絡もない。
連絡してみても返事は帰ってこない。
「あーごめんっ!またね!」
私は男に手を振りちひろを探すために、室内を歩き回った。
うーん。どこいったのかなぁ…。
帰った、とか?
でも帰ったなら普通連絡するよね?
何かあったのかな?
そう考えるとめちゃめちゃ不安になってきた私は暗闇に目を凝らして探した。
ふいに肩を叩かれ振り向くと、キョトン、とした顔をしたちひろが首を傾げていた。
「よかったー。あんたいなかったから心配したじゃん。連絡も帰ってこないし」
ちひろは携帯の画面を確認し、苦笑いを私に向けた。
「あ、ごめん。今見た」
まぁいいか。無事だったし。
「いいよ、いったん出ようか。疲れたでしょ」
クラブから出ると、静かで冷たい現実に一気に戻ってきた事を思い知らされる。
「風、気持ちいいね〜」
そういってちひろは目を細めた。
コンビニでお酒でも買うか。
