「……なんで?」
「……へ…?」



息を整えようとしていると、蓮くんがぼそっと何かを呟いた。



少し目が潤み、ぼやける視界の中、蓮くんが切ない表情をしているのがわかった。



どうして…?
どうしてそんなに苦しそうな顔をしているの?



「…れ、蓮くん……」



「なんで受け入れるの?嫌なら嫌って言いなよ。
ずっとそうやって我慢するの?」



「えっ……?」



「…嫌だったんだよね?


政略結婚ってずるい方法で菜穂手に入れて、本当はずっと嫌だったんだよね…?」



嫌だった…?



そんなの嘘だ。
蓮くんの勘違い。



きっと今日の秋野くんの言葉が、私の気持ちだと思ったのだろう。