『えー、嫌だよ。
だって俺、菜穂に恥ずかしいことしたいから』
「……っ」
蓮くんが電話越しに、楽しそうに笑う声が聞こえてきた。
『でも、もし秋野に何かされそうになったらすぐ連絡してね。
いつでも電話できるように用意しておいて?
あ、あと遅かったら迎えに行くからね。
そうなったらもっと恥ずかしいことしようかな』
蓮くんは優しいのか、それとも意地悪なのか。
やっぱり両方とも当てはまる。
「む、迎えなんて大丈夫だから…!
なるべく早く終わらせて帰るね!」
『いいんだよ?焦らなくても。
それとも早く俺に恥ずかしいことされたいの?
もしかしてしてほしい、とか?』
「そ、そんなことは決して…!」
電話でも完全に蓮くんのペースで、蓮くんは私の反応を見て楽しそうに笑った。
『じゃあまた後でね。
焦りすぎて怪我しちゃダメだよ』
蓮くんはそう言うと電話を切ってしまい、私が拒否する余地もなかった。



