急いで行こうにもまだ多くの人が行き来していたため、早くは行けなかった。
図書室があるのは最上階である5階。
そしてちょうど4階まで上ると、移動教室ばかりだったから誰も人がいなかった。
誰もいないのは少し変な感じがしたけど、とりあえず図書室に向かおうとした時。
スマホが音を立てた。
画面を見ると蓮くんからで、慌てて電話をとる。
「は、はい…!
桃原です」
電話なんて滅多にないから、思わず苗字を言って緊張してしまった。
『……ふっ、何焦ってるの?』
そんな私に蓮くんが小さく笑った。
恥ずかしい…。
一人照れていると、蓮くんがまた口を開く。
『ねぇ、この間言ったこと覚えてる?』
「……え…?」
『他の男と二人きりになったら恥ずかしいことするって』
「……っ、そ、それは…」
『ちゃんと覚えておいてね?
家に帰ったら楽しみにしてる』
「れ、蓮くん…!
恥ずかしい、から…その……蓮くんも手伝いに来てほしいです…」
そしたら秋野くんと二人きりになることはない。
どうしても“恥ずかしいこと”が何を指すのかわからないため怖くて、蓮くんに頼んでみる。



