「やっと二人きりになったね、菜穂」
「あ、えっと…私たちも行かないといけないんじゃ」
「せっかく二人きりになれたのに?」
じっと、悲しそうに見つめてくるからつい「そうだね」と言ってしまいそうになる。
でも我慢だ、と心の中で唱えて蓮くんに私はまた言う。
「そ、それでも始まっちゃうから……」
「……どうして?
俺はそれでも行きたくないのに」
「だ、ダメだよ…一緒に行こう?」
「…………え、どこに?ここのホテルの部屋?
それなら全然いいよ、そうだ部屋に行こう。
最上階の部屋にしよう夜景が本当に綺麗だからね」
そしたら本当に蓮くんが腕を引いて部屋を出ようとするから、焦ってしまう。



