「あっ!蓮いた……って、もしかしてその子が菜穂ちゃん!?」
その女の人の声は私のことを知っていて。
誰だかわからなくて、蓮くんから離れて振り向こうとしたけど、力が強くてそれができない。
「……母さん、騒がしいよ。
菜穂がびっくりするだろう?」
嘘…お母さん?
今蓮くん、お母さんって言ったよね…?
ということは、今部屋に入ってきたのは蓮くんのお母さんということになる。
ど、どうしよう…初対面なのに挨拶ができていない。
「れ、蓮くん…あの、挨拶しないと…」
「いいから。菜穂はじっとしてて」
「ちょっと蓮、私に菜穂ちゃんをよこしなさい!
そんなにきつく抱きしめたら可哀想でしょう?」
「大丈夫、菜穂は苦しそうじゃないよ」
「気を遣ってるだけなの」
終いには言い合いを始めてしまう。
そんな二人を見て、社長さんは「まあまあ」と落ち着かせようとするが、二人の攻防戦は続く。



