ーーーその後掃除を終わらせ、私たちは学校を後にした。
秋野くんは自転車通学らしく、先に帰っていった。
同じ学校の生徒は周りにいなかったから、私と蓮くんは並んで歩くことにした。
だけどその間も私は図書室でのことが頭から離れなくて。
確かにあの時の蓮くんは、いつもの優しい表情ではなく、“男の人”の表情をしていた。
「菜穂…?
ほら、着いたよ」
ずっと考え事をしていたから、蓮くんにそう言われてはっと我に返る。
「ご、ごめんね…!」
「ううん、気にしないで。どうぞ」
優しく笑う蓮くんは、もういつも通りだった。



