「えっと…あの……」 「……菜穂」 「……っ」 その時、耳元で私の名前が囁かれた。 思わず肩がビクッと飛び跳ねた。 手を重ねられて、耳元で囁かれただけなのに顔が熱くなって、ドキドキし始める。 「あの…秋野くんに、バレちゃう…」 「ダメだよ、他の男の名前呼ぶなんて。 それに、何勝手に二人きりになってるの? 菜穂、悪い子だね」 その声は低くて、落ち着いていて。 怒っているのかもしれない。