そしてまた、秋野くんは違う本棚に移る。
その時にようやくほっと一息をついた。
良かった…なんとかバレずに済んだ。
だけど蓮くんにも掃除を任せてしまって悪いな。
そう思いながら、本の順番を整理していると……
「桃原さん」
秋野くんには聞こえないくらいの声の大きさで、蓮くんが私の名前を呼んだ。
蓮くんが今どんな感情かわからないのだけど、なんとなく振り向くのは危険な気がした。
「か、上条くん……」
「……どうしてこっち見てくれないの?」
私が蓮くんの名前を呼べば、蓮くんが私の後ろにやってきて。
そして本棚に伸ばしていた私の手の上から、蓮くんの手が重ねられた。



