かと思えばすぐ、片手を背中にまわされ抱きしめられる。
「か、上条くん…?」
「…ちゃんと名前で呼んで?」
「……れ、蓮くん…」
ダメだ、やっぱり恥ずかしい。
これから下の名前で呼ばないといけないなんて、ハードルが高すぎて厳しいな。
「……可愛いね、どうしたの?」
そんな私の反応を見て、可愛いと言ってくれるけど上条くんの優しさだろう。
いや、それしか考えられなかった。
「あの、どうしていきなり…こんなこと……」
「菜穂の全てが愛しかったから、かな」
全てが愛しい…?
愛しいって、どんな感じのことだろう。
やっぱり私って疎いんだなと、改めて感じさせられる。
「毎日こんな風に過ごせるなんて幸せ者だ、俺」
「で、でも…本当に私でいいの?」
「もー、その言葉何回言うの?
菜穂しかダメなの」
そう言って上条くんは私の頭を撫でる。
その言葉に少なからず安心した私は、そっと上条くんに身を任せた。



