8.空
明るくなってきた空をバックに逆光で墨絵のような山が目の前に近づいてきた。
周辺は田舎の集落らしく田畑が広がり、昔ながらの大きな和風造りの邸宅が所々に建っている。
車は山に入って行った。
生い茂った木々の間から青白んだ空が時々見え隠れする。
しばらく進んだ先にようやく開けた場所が現れ、そこに車は停車した。
朝早いからか、駐車場らしきその広場にはまだ一台も車は停まっていない。
車を降りると、石畳の道が続きその先に山門が見えた。
「ここ、お寺?」
ゆっくり歩く醍の斜め後ろから尋ねる。
「ああ。朝6時から参拝できるんだ」
「そんな早朝から開いてるんだ」
早朝の寺は、一段と静寂に包まれ神秘的な姿を現した。
うっすらと霧が立ちこめ、なんともいえない張り詰めた空気。
誰もいないのに誰かに見られてるような気持ちになって意味もなく緊張する。
「吉丸様、おはようございます。お久しぶりですね」
ふいに声をかけられその方を振り返ると、一人の僧侶が笑顔で立っていた。
「おはようございます。今日は久しぶりに坐禅組みにきました。今からよろしいですか?」
「坐禅?!」
思わず目を見開いて彼の顔を見上げる。
醍は、いたずらっぽい表情でニヤッと笑うと私に視線を向けて言った。
「そうだよ。ここは坐禅が組めるんだ」
僧侶が私達の方へゆっくり歩み寄ると胸の前で手を合わせ頭を下げる。
「どうぞこちらへ。お堂にご案内致します」
気づいたら、戸惑う私の手は彼の手に包まれ、僧侶の後に引っ張られるように続いた。
明るくなってきた空をバックに逆光で墨絵のような山が目の前に近づいてきた。
周辺は田舎の集落らしく田畑が広がり、昔ながらの大きな和風造りの邸宅が所々に建っている。
車は山に入って行った。
生い茂った木々の間から青白んだ空が時々見え隠れする。
しばらく進んだ先にようやく開けた場所が現れ、そこに車は停車した。
朝早いからか、駐車場らしきその広場にはまだ一台も車は停まっていない。
車を降りると、石畳の道が続きその先に山門が見えた。
「ここ、お寺?」
ゆっくり歩く醍の斜め後ろから尋ねる。
「ああ。朝6時から参拝できるんだ」
「そんな早朝から開いてるんだ」
早朝の寺は、一段と静寂に包まれ神秘的な姿を現した。
うっすらと霧が立ちこめ、なんともいえない張り詰めた空気。
誰もいないのに誰かに見られてるような気持ちになって意味もなく緊張する。
「吉丸様、おはようございます。お久しぶりですね」
ふいに声をかけられその方を振り返ると、一人の僧侶が笑顔で立っていた。
「おはようございます。今日は久しぶりに坐禅組みにきました。今からよろしいですか?」
「坐禅?!」
思わず目を見開いて彼の顔を見上げる。
醍は、いたずらっぽい表情でニヤッと笑うと私に視線を向けて言った。
「そうだよ。ここは坐禅が組めるんだ」
僧侶が私達の方へゆっくり歩み寄ると胸の前で手を合わせ頭を下げる。
「どうぞこちらへ。お堂にご案内致します」
気づいたら、戸惑う私の手は彼の手に包まれ、僧侶の後に引っ張られるように続いた。