時には優しく…微笑みを

ここでいいか、と菅野課長が連れてきてくれたのは、普段私達が入る事を躊躇するようなお店だった。

ここ、ここ?
財布にいくら入っていたかな…
ちらっと、お品書きに書かれている値段を見て、ア然とした。
ランチが1500円〜なんて、なんて事!!ないない…

「何してんだ?入るぞ?」

「ええ!あ…あの、菅野課長?ここにするんですか?……高くないですか」

最後の声が小さくなって、高くないですか、の声が聞こえていたかは分からないけれど、

「は?何言ってるんだ。金の心配はするな、さ、入るぞ」

「い、いや、そ、それは…」

私の抵抗も虚しく、お店に引きづられるように入っていった。

「…何、難しい顔をしてるんだ?好きな物頼め。休憩押したからな、俺からのお礼だよ」

メニューから顔を上げた私は、

「な、そ、それは、結構です。自分の分ぐらい…」

「あのな、俺は上司だぞ?命令だ、分かったな」

「……はい」

分かったか、と口角を上げて笑った課長に不覚にもときめいてしまった私。
また頭をブンブンと振っていた。

「大丈夫か?食べる前に気持ち悪くなるぞ」

はっ、またやってしまった。

諦めた私は、課長の言うように好きな物を頼んだ。

滅多に食べられない物を食べた私は、満足していた。