数か月後―――


「忘れ物はないか?」

「うん、大丈夫。
 全部持った」


手術を終えたアタシは
リハビリも含めて入院生活が続いたが
今後は通院だけで良いと先生から退院の許可が下りた。


仕事復帰はまだもう少し先だけど
デスクワークで無理しない程度であれば
やって大丈夫との事だから
少し落ち着いたらまた会社に戻る。


それと
帰宅先は…


「隣なのに
なんか変な感じだね」

「そりゃ珍しくねぇだろ。
 何度も来てんだから」


アタシが住んでた部屋の隣。
煌月の部屋に引っ越したのだ。

荷物運びはラクだったよ。
すぐ隣だから。


「あとはこの段ボールだけか…」


自分が元々いた部屋にある
最後の箱を運ぼうとすると。


「おい、バカ!
 俺が持つから無理すんなッ」


煌月…じゃなくて
ジンの心配性はグレードアップしている。


「そんなに神経質にならなくても…」

「今日退院したばっかのヤツが何言ってんだよ!
 マジで今までみたいな無茶すんなよな!」

「あ、はい…」


今までそんなに無茶していたのか?アタシは…。


「あ、そうだ…
セツナ」

「ん?」

「おかえり」

「うん。
 ただいまッ」








         『隣人はクールな同期でした。』 ― 完 ―