乾杯も済み
飲んでいたビールもなくなる頃。


「さて。
 煌月も元気そうだし
 アタシはそろそろ帰るよ」


顔も見れたし安否確認完了。
1人にしても
この前みたいに荒れる事もなさそうだね。


「…ありがとな」

「ん?何が?」

「俺もヒナコも
 そして、母親も…
 お前がいたから救われた」

「煌月…」

「母さんの笑顔、最期に見られたのは
 七星の…おかげだ。
 お前が…傍にいてくれたから…ッ」


俯きながら
静かに泣いていた―――


必死に堪えていたモノが
一気に溢れ出したように
声を押し殺して涙が零れ落ちていく。

母親を失った寂しさや悲しさが
アタシにも全部伝わってくる…


初めて見たコイツの涙。
この数年
同期として隣人として
ずっと一緒にいたはずなのに
弱音を聞いた事がなかった。

絶対に
人前で泣く事がなかった男だったのに
こんなにも抱え込んでいたなんて…――


「…ッ」


そんな煌月を
アタシはそっと…
抱きしめてしまった。


アタシに何が出来るのか
まだ全然わからないけど…
今はすごく
こうしたかったんだ―――