だけどリュウ君ママは私の言葉を聞いた途端、慌てたように口を開いて。


『だ、大丈夫ですよ!慣れてるんで』

『いや、でも…』

『本当、大丈夫なんで。今日はありがとうございました』


車のドアを開けるとリュウ君を抱いてスタスタ足早にアパートへ向かって歩いていく。
そのスピードは本当に慣れているような速さで、あっという間に階段を登っていってしまった。


『なかなか頼もしいな、あの子』

『うん』

『小さくても、わりと力あるんだな』

『そ…そう、だね』


言葉に詰まってしまったのは、何故なのかわからない。
ただ、モヤっとした感情がその一瞬現れたことだけは自覚していた。

小さくても。
そう言った大地の言葉が、不思議と気に触ったのだ。

きっとその言葉には、悪気も深い意味もなくて。
なんとなく、ふいに口にしただけで。

大地は悪くない。
頭ではそうわかっているのに、どうしてだろう。
彼女と比べられたように感じてしまって。


『リュウ君ママは、私みたいに大きくないしね』

気付けば嫌味のような言葉をポツリとこぼしていた。