「明日が、最後の日。」

その言葉が頭の中から離れず、私は病室で笑顔が消えかけて

いた。

何回も、何回も同じ言葉が繰り返し聞こえるようだった。

心臓病が発症し、余命宣告されてから三ヶ月がたち、いよい

よそれが明日なのだ。

やり残したことはないだろうか?後悔はないだろうか?

そんなの…、沢山ありすぎて余計分かんなくなる位だ。

私は……私は。

この先も生きていたい…!!

たった1つだけの願いなのに、それは叶わない願い。

何度も自分の体を呪いたくなるくらい、胸が押しつぶされそ

うになった。

「私は…生きてはいけないの…?」

この三ヶ月間、私は日に日に体が弱くなっていくのが分か

る。

食事も喉が通らず、足は思うように動かない。
 
こんなの、夢であってほしい…。

私は、病室のベッドの上で、『治れ!治れ!』と、心の中で

叫び胸を叩く。

「あいつを残して…、先にいなくなるのなんて嫌だよぉ…。」

もっと生きて色んなところに行って、楽しんで思い出を作り

たい。

「ごめんね…。ごめんね…。」

その時、大きな腕が私の体を優しく包み込む。

「……!?」

その腕は、幼馴染の史樹(しき)の腕だった。

「な…何…!」

「お前は…よく頑張ったよ。自分の事だけで、大変なのに俺の

ことまで考えてくれて…。だからもう、大丈夫だ。」

そして、その腕は更に強く抱き寄せ私の頭を優しく撫でる。

「で…でも…私は…、」

「もう、怖くないよ…。だから、言いたいこと言えよ。全部聞

いてやるから。」

その言葉に、私は強く抱き返し、思いをぶつけた。

「死んでも私のこと…、忘れない…?」
 
「忘れないよ。」

「時々、私のこと思い出してくれる?」

「もちろんだよ。」

「わがままだけど、最後は側にいてほしい…。」

「もちろん、側にいるよ。」

「最後まで大好きだったよ…。」

「俺も、大好きだ。」

言葉を交わし、手を繋いだ。

「…もう、その言葉を聞けただけで嬉しい…。だから、史樹は

幸せになって…。それが私の、最後の願いだよ。」

大粒の涙は、私の生きれなかった人生を君に受け渡すように

こぼれた。

「君でよかったぁ…。」

そして、最後のお別れのキスをし、私の物語は終わりを迎え

たのだ。

大好きな人の側で最後を迎えられた私は、今までで一番幸せ

だったよ。







「ありがとう、私を愛してくれて」