「……もう、勘弁してください」



和泉くんは何かを噛みしめるように、下唇を噛み締めた。

意味がわからなくて呆然とする私を見て、懇願するように目を細めた和泉くん。



「誘惑するのは、俺だけにしてくださいね」



わ、私、いつ誘惑なんてしたんだろうっ……。

わからないけど……でも、そんなこと他の人になんてするわけがない。



好きになってもらいたいのは、あなただけ。

和泉くんが私に誘惑されてくれるのなら……。



和泉くんの首に、手を伸ばす。

ぎゅっと引き寄せると、バランスを崩した和泉くんが覆いかぶさってきた。

全体重がかかって苦しいけど、私と和泉くんの間に距離がなくなる。



私は耳元に口を寄せて、そっと伝えた。




「和泉くんだけが……大好きです」







【END】