【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



「今もまだ、和泉くんが自分の恋人だなんて……夢、みたいなんです……」



もう何度もこうされたのに、いつまでたっても慣れない。



「何でですか。俺なんかどこにでもいる普通の男です。ていうか……それを言うなら俺だってそうですよ」



え?



「静香先輩と恋人になってから、毎日幸せです」



大きな手が、私の頬を撫でた。

見つめてくる瞳が優しすぎて、息が苦しくなる。


私だって……こんなに幸せでいいのかなって、毎日思ってる。

私といることで和泉くんが幸せを感じてくれているなら……これ以上に嬉しいことはない。



「部活ばっかで、まともにデートとかもできなくてすみません」



申し訳なさそうな和泉くんに、首を左右に振った。

もちろんデートも嬉しいけど、今のままで十分すぎるほど幸せ。


だって、理由なくそばにいられる権利をもらえたんだ。

毎日話して、当たり前のようにおはようとさよならが言えることが、幸せで幸せでたまらなかった。

和泉くんの胸に、頭を預ける。