【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜




「……あれ、静香さんたち……!」



少し離れたところから、名前を呼ばれた気がして顔を上げる。



「健太くん……」



部室に用事があったのか、ひとりでいる健太くんの姿があった。

健太くんは私の顔を見るなり、すごい形相で駆け寄ってくる。



「何してるんですか!……と、というか、どうして静香さん泣いてるんですか……!?」



あっ……そ、そっかっ……。

心配をかけてしまったことに気づいて、慌てて涙を拭いた。



「これにはふかーいワケがあるのよ」



私が「何にもないんです」と答える前に、リナちゃんが意味深な言い方をする。



「深いワケ……?」

「静香ちゃんと和泉、付き合うことになったんだって」



首を傾げた健太くんに、今度は佐倉先輩が口を開いた。