前までは、気軽に話しかけることもできなかったのに……。

今こうしてふたりきりで話せているのは、奇跡でしかない。

昨日の私が見たいら、驚きすぎて心臓が止まってしまうかもしれない。


恥ずかしさを紛らわせるように和泉くんから視線を逸らそうと斜め上の方を見たとき、ふと教室の時計が目に入った。



「あっ……私、教室にリナちゃんを待たせてるんです……!」



どうしよう、結構時間が経っちゃってる……!

名残惜しいけれど、これ以上待たせるわけにはいかない。


ここで……バイバイかな……。



「じゃあ、教室まで一緒に行きましょう」



寂しく思ったとき、当たり前のようにそう言った和泉くん。



「え……でも……」



付き合わせるのは、申し訳ない……。




「俺が少しでも一緒にいたいだけなんで。行きましょう?」



さらりと私の心臓を騒がせることを言う和泉くんに、案の定鼓動が早くなる。