「噂話なんか鵜呑みにして、勝手に敵視して、静香先輩のこと遠ざけて……子供すぎました。本当にすみません……」
苦しそうな声に顔をあげると、和泉くんは悔しそうに顔を歪めていた。
「俺がもっと早くに自分の気持ちを認めていたら、佐倉先輩に奪われずに済みました。静香先輩が怖い思いすることも、なかったのに……心底自分が情けないです」
そんなっ……。
「情けなくなんてないですっ……」
和泉くんはいつだってかっこよくて堂々としていて、私にないものを全部持っている人。
助けてくれたあの日から……手を伸ばしても絶対に届かない場所にいた、眩しい存在。
「和泉くんは……誰よりも素敵な人だと、思います……」
「……っ」
「少なくとも、私にとっては……一番、かっこいい人ですっ……」
だから、情けないなんて言わないでほしい。
「なんなんですか、さっきから」
「ご、ごめんなさい、気に触るようなこと——「いちいち可愛すぎるんですよ。どうすればいいかわからなくなる……」
和泉くんの表情は困っているように見えるけど、嫌がっているようには見えない。

