【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜




だって、和泉くんが……きっとこの世界で一番素敵な人が、自分を好きだと言ってくれた。


それだけで、自分のことも好きになれた気がした。


心の中がいっぱいいっぱいになって、うまく言葉が出ない。

小さく深呼吸をして涙を拭き、拙くも言葉を紡いだ。



「噂は、本当にどこから流れたのかわからなくて……」



少しだけ、和泉くんの服の袖を握った。

誤解だけは解いておきたくて、和泉くんには本当の私を知ってもらいたくて、握る手にぎゅっと力が入る。



「私、あ、愛人?だとか、言われているみたいなんですけど、そんな相手はいないですっ……」



本当に、私が好きなのは、あなた、だけで……



「男友達も、好きな人も今までできたことがなくって……だから、あの……」



子供のようにたどたどしく話す私に、和泉くんが優しい瞳を向けてくれる。