【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜




「恋人になってください」

「……っ」



……ありえない、よっ……。



「あ、あの……」

「……はい?」

「これは、現実ではないと、思いますっ……」

「え?」



ずっと思っていたことを口にした私を見て、和泉くんがパチパチと瞬きを繰り返した。

そして、ふっと微笑んで優しく頬を撫でられる。



「……現実ですよ」



和泉くんの手の感触が、温もりが——本当に現実なのだと、教えてくれた。



「静香先輩が好きです。あなたの特別になりたいです」



とっくに願うことを諦めた。

願っても無駄だと、想うだけの恋にしたはずだった。


それ、なのに……




——こんな幸せなことが、私に起こって、いいの……っ。