「やっぱり、無理です」



和泉くんが、私の手を掴んだ。

……これは、夢……?

そう思うくらい衝撃的な出来事に、私は息をするのも忘れて和泉くんを見つめる。



「——この人は、渡さない」


そう言って、私の手を掴んだまま、部室から抜け出した和泉くん。



……何が、起きてるんだろうっ……。

わからない……わからない、けど……


もうずっと、この手を離さないでほしいなんて、強欲なことを思った。






私の手を引いて、和泉くんが入ったのは初めて来る場所だった。



「ここ、空き教室で……あんまり誰も、知らないんですよ。静かになりたい時、よく使ってて……」



そう、なんだ……。

こんな場所があるなんて、知らなかったな……。

でも……

どうして、私を連れてきてくれたんだろう……?