頼む、間に合え……。




一度出ていったはずの部室のドアを、再び開けた。

俺の中には、少しの迷いもなかった。


もういっそ静香先輩がどんな人だって構わない。

俺は静香先輩が好き。とにかく、それだけは伝えたい。


ドアの先には、さっきとは違う光景が広がっていた。

泣いている静香先輩と、そんな静香先輩に迫るように壁に手をついている佐倉先輩。


佐倉先輩が勢いよく入ってきた俺を見て、いつもとは違う余裕のない表情をしている。



「……何?」


まるで邪魔とでも言いたげな顔だったけど、俺は気にせずに静香先輩の手を掴んだ。

佐倉先輩から奪うように手を引いて、自分のもとへ抱き寄せる。



「やっぱり、無理です」



さっきの言葉は、訂正する。

あんたと静香先輩が付き合うなんて——許せない。


佐倉先輩に、取られたくない。



「——この人は、渡さない」



他の、誰にも。





【side和泉】-END-