俺は結局、何も知らないまま……何も聞かないまま、この感情を捨てるのか?


今思えば、俺が静香先輩にちゃんと向き合ったことはなかった。


噂を信じて、酷い態度をとった。

俺が嫌いな人種だと、決めつけた。




結局、どれが本当の静香先輩なのか、何が真実なのかはわからない。

でも、今ひとつだけわかることがある。


ここで戻らなければ……俺はきっと、一生後悔する。






今まで、いろんなものを諦めてきた。

突き放して、耳を塞いで、背を向けてきた。


でも……


——あの人のことだけは、諦めたくない。



俺は来た道を戻るため、振り返る。

そのまま、全速力で走った。