【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



【side 和泉】




「お、お兄ちゃんっ……」



……は?



お兄、ちゃん……?



俺の視界に映っているのは、静香先輩と……高級車で静香先輩を送っていた男。

俺は訳がわからず、ふたりの姿をただぼうっと見つめる。



「倒れたって聞いたぞ……!大丈夫なのか!?」

「う、うん。もう平気だよ」



待て、待って……兄妹?


よく見ると、確かに目や鼻が似ていて、兄妹と言われても納得できた。

むしろ、そう言わればもうそうにしか見えない。

仲睦まじそうな姿に、頭を押さえた。



愛人じゃ……なかったのか……。


兄、って……兄妹で、頬にキスとかすんなよ紛らわしい……っ。


……でも、それじゃあ……


これでいよいよ、静香先輩の悪い噂に、証拠のあるものはなくなった。

ていうか……俺は勝手に勘違いして、愛人の噂を信じてしまったっていうことになる。