【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜





「静香ちゃん、お兄さんと一緒に帰る?」



話が聞こえていたのか、笑顔でそう聞いてくれる佐倉先輩。

お兄ちゃんが誰だとでも言わんばかりに鋭い視線を向け、それに気づいた佐倉先輩は視線をお兄ちゃんの方に向けた。



「初めまして、主将の佐倉といいます。今回の合宿で、静香さんに無理をさせてしまって……すみませんでした」


頭を下げた佐倉先輩に、私は慌てて口を開いた。



「ち、違うのお兄ちゃん、私がひとりで空回っちゃって……」



佐倉先輩が謝る必要、ひとつもないのにっ……。



「ああ、わかってる。静香は頑張り屋さんだからな、想像はつくよ。君、大丈夫だから。連絡をくれてありがとう」



お兄ちゃん……。



「このまま連れて帰ってもいいかな?」

「はい。もちろんです」



佐倉先輩はそう言ってから、部員さんたちの方に振り返った。