【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜


「和泉くん、私みたいな軽そうな女は嫌いだって……もう関わることもないだろうって、言われたの……」



昨日あれだけ泣いたのに、まだ涙は枯れ切っていないのだろうか。

じわりと溢れたものが、視界を歪める。



「もう完全に、振られ、ちゃった……えへへ……」



リナちゃんに心配をかけたくなくて、精一杯の笑顔を作る。

そんな私を見るリナちゃんの瞳に、一瞬殺意が滲んで見えた。



「…………あのクソ生意気許さない」

「え?」

「もうやめなさいあんな男!!噂なんて鵜呑みにするような男、あんたには相応しくないわ!!ほんとガキ!クズ!クソよ!!!」



り、リナちゃんっ……?



「ちょ、ちょっと落ち着いて、リナちゃん……!」

「あー、あいつの顔思い出したら腹が立ってきた……!」



本当に激怒している様子のリナちゃんは、歯を食いしばりながら拳を握っている。