【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜




自分自身の行動に動揺していると、扉が開く音がした。

保健医が戻ってきたのかと思ったけど、室内に響いたのは男の声。



「静香ちゃん!」



取り乱した様子で走ってきた佐倉先輩に、下唇を噛んだ。

この人は、いつも静香先輩との時間を邪魔してくれる。



「大丈夫?来るの遅くなってごめんね」



静香先輩にそう聞いている佐倉先輩に、心の中で来なくてよかったのに……と呟いた。

ていうか、キャプテンのくせに私情で抜けてんじゃねーよ。

あーダメだ。文句しか出て来ない。



「佐倉先輩……こちらこそ、ご迷惑おかけしてすみません……」

「気にしないで。ていうか謝るのは俺の方だよ。静香ちゃんにばっかり任せてごめんね……」



完全にふたりの世界を作り、静香先輩と話している佐倉先輩。

話しているだけなのに、俺なんて入る隙がないと言われているように感じるほど、お似合いのふたりに見えた。