【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜




「……いずみ、く……ん?」



ゆっくりと俺の名前を呼んだ静香先輩に、どくりと心臓が大きく脈打った。

綺麗な瞳に、俺だけが映っている。



「……体、平気ですか?」

「あ……は、はい……」



まだ顔色は悪く、話すのも辛そうに見える。



「静香先輩、さっき倒れたんですよ。疲労による貧血ですって」



そう言えば、静香先輩の目が大きく見開かれた。



「あ……どうしよう……私、洗濯ものがまだ……」



……何言ってんだ、この人。



「今はそんなことどうでもいいですから。保健医も言ってましたけど、ゆっくり休んでください」

「でも……」

「仕事なんて他の奴に任せたらいいですって」



余計なくらい、マネージャーも多いんだから。


静香先輩が、悲しそうに眉の端を下げた。



「……ごめん、なさい……」



……え?

なんで謝るんだ……?