【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜





「……あ」



静香先輩……。

校舎の方から、タオルを運んでくる静香先輩が見えた。


やっと見つけたことに安心したのもつかの間、俺はすぐに目を細める。

……なんか、足元ふらついてないか?


ていうか……



顔色、真っ青じゃ……



そう思った時、華奢な体が大きく傾いて、地面に倒れた。







——は?








「……っ、静香先輩!!!!」



考えるよりも先に、体が動く。

静香先輩の名前を叫んで、急いで駆け寄った。



倒れたまま、動かない静香先輩。



「先輩!!大丈夫ですか……!?」



ゆっくりと肩に手を添えてそう聞いた俺の声に、返事はなかった。

苦しそうに眉を顰め、息苦しそうに呼吸をしている静香先輩の姿に焦りを隠せない。

遠目から見てもわかった顔色の悪さは、近くで見ると尚更酷かった。