【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜




「柴原」

「ん?」

「静香先輩は?」

「あー、朝ご飯の用意してると思う。午前中は洗濯とかもしてもらってるし……って、なんで?」

「いや、別に」



忙しそうだから……後でにしよう。

そう思って、軽くストレッチを始める。



「お前……ほんとどうした?」

「は?何が?」

「お前が女の人の話するとかなかったのにさ。……やっぱり、静香先輩のこと——」

「おーい!柴原!!」



タイミングよく、離れた場所から柴原の名前が呼ばれた。



「おう!どうしたー?」



走って行った柴原を見て、ほっと胸を撫で下ろす。


よかった、聞かれなくて。

今あの質問をされたら困る。



「違う」って、答えられないだろうから。











「うわ!今日和食だ!」

「今日もうまそー!!」




朝練を終えて食堂に行くと、朝食のいい匂いが充満していた。

静香先輩……いない。


ご飯をよそうマネージャーの中に、俺が探している人の姿が見つからない。