【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



部屋に戻って、その日はこれ以上風邪を長引かせないようにひたすら眠った。












5日目。



「お、和泉!!お前治ったのか!」



グラウンドに来た俺を見て、柴原が笑顔でそう言った。

今日はもう、体のだるさも残っていない。

眠すぎて体が鈍っている気がするけど、体調は万全だ。



「もう大丈夫なのか?」

「うん」

「よかったなぁ!残り2日だけど、楽しめよ〜」



イタズラ小僧のように笑う柴原を、横目で睨んだ。

遠回しに休みすぎだって言いたいのか……俺だってわかってる。

つーか、今はそんなことどうでもいいんだよ。


キョロキョロと、あたりを見渡した。

静香先輩は……グラウンドにはいないのか……。


姿が見当たらず、肩を落とす。

昨日頭を冷やしたから、今度こそ今日は聞こうと思ったのに。
来てくれなかった、理由を。