【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜




「……リナちゃんの悪口言うの……やめてくださいっ……!!」



聞いたことのないような、静香先輩の声。

そして、涙を流している先輩の姿に、俺は目を見開いた。


この人……どうしてこんなに怒ってるんだ?

感情的になっている静香先輩に、そう思う。

だって、こいつらは静香先輩を褒めてた。
貶されたのはリナ先輩で……それなのに、どうしてこの人が怒る必要があるんだろう。



「リナちゃんを傷つけるようなこと言ったら……私が許しません!!」



——どうして、人のためにこんなふうに感情を剥き出しに出来るんだろう。


俺の中の……というより、周りからの話で形成されていた静香先輩の像が崩れていく。

この人は男タラシで、軽くて、平気な顔で男を騙して……


違う。そんな人じゃない。

そんな人が、こんなふうに人を庇って怒れるか。


ねぇ、先輩。

本当の静香先輩は、どんな人なの?


俺は……本当のあんたが知りたい。


どうしようもなくあんたに惹かれてることは、もう認めるから。