「……俺が慰めてるから、心配しなくても平気だよ」



頭を佐倉先輩の胸に押し付けている体勢での為、どんな構図になっているのかわからない。

ただ、佐倉先輩が和泉くんの方を見ながらそう言ったらしいことはわかった。


しん……と、少しの前静寂が流れる。



「……そうですか。……邪魔してすみません」



それを破ったのは、和泉くんの苦しそうな声。

風邪のせいか、声が掠れていた。


和泉くんが去っていく、足音だけが聞こえる。

佐倉先輩の腕の中で、私はそれを聞いていることしか出来なかった。




「和泉、行ったよ」



どうやら、私のために和泉くんを遠ざけてくれたらしい佐倉先輩。

抱きしめたのはきっと、慰めている演技のためかなと、佐倉先輩の対応力に頭を下げた。



「ありがとう、ございます」



結局、どうして和泉くんがいたのかはわからなかったけど……会わないようにしていたから、佐倉先輩に助けられた。