【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



我慢出来ずに、目の前の体を抱き寄せる。

驚いて抵抗も出来なかったのか、静香ちゃんはすっぽりと俺の胸に収まった。

片方の手で引き寄せて、もう片方の手で頭を撫でる。



「泣いていいよ」



俺の前で、作り笑いなんてしなくていい。



「あ、の……」

「悔しかったね」

「……っ」

「大丈夫。静香ちゃんがああ言ってくれて、リナちゃんも報われたと思うよ」



きっと自分を責めているんだろうと思って、そんな言葉を贈った。

図星だったのか、わかりやすく反応する静香ちゃん。



小さな背中が、小刻みに震えている。



「……リナちゃんは……凄く、良い子なんですっ……」

「うん」

「こんな私と仲良くしてくれて、いつも、相談にも乗ってくれて、優しくて……」



こんな私だなんて、下卑する必要ないのに。

そう思ったけど、今は言わない。