【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



「さくら、せんぱい……」



目にいっぱい涙を溜めた静香ちゃんに見つめられ、ズキリと痛む心臓。



「ど、どうしてここに……?」



急いで目の前まで駆け寄ると、静香ちゃんは慌てて目をゴシゴシと擦った。



「どうしてって……」



静香ちゃんが一人で泣いてるのに、放っておけるわけないでしょ。

じっと見つめながら、赤くなった目の下を指で撫でた。


静香ちゃんは驚いた様子で目を見開いた後、自分の顔を隠すように手で覆う。



「す、すみません……目にゴミが入ってしまって……仕事が残ってるのに、ごめんなさい……!す、すぐに戻りますね!」



一体何を勘違いしたのか、無理に笑う笑顔が痛々しい。


仕事なんてどうでもいい。

こんな時まで、変な気は使わなくていいから。


静香ちゃんはもう少し、自分を大事にして。

静香ちゃんが大事に出来ないなら、俺が……



「……っ、え?」