【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



静香ちゃんの考えを読んで、人気の少ない場所を片っ端から探す。


部活中でもこんなに、全力で走ることないや……。


息を切らしながら駆け回っている自分にそう思う。

静香ちゃんと出会う前の俺が今の俺を見たら、きっと鼻で笑い飛ばすだろう。


……別に、それでいい。

誰に笑われたって関係ない。


走って走って走って、ようやく小さな背中を見つけた。


グラウンドから一番離れた校舎の裏で、一人隅っこで泣く静香ちゃんの姿を。


ああもう……こんな誰にも見つからないような場所を選んで……



「静香ちゃん……!!」



可哀想で、見てられない。

自分でも驚くほど大きな声で、名前を呼んでいた。


必死さを隠しもしないその声色に、我ながら笑えてくる。


ビクリと体を震わせた静香ちゃんが、こちらへ振り返った。