【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



そんなことをぼうっと考えながら、汗を流したくて手洗い場の方へと向かった。

なんとかマネージャーを自然に撒いて、ひとりで利用者の少ない方に来た。


はぁ……マネージャーたち、そろそろ注意した方がいいかな。

やってる仕事といえば、俺や和泉への補給品渡しくらい。


いつもリナちゃんと、部費泥棒って影で呼んでいたのを思い出す。

リナちゃんがいなくて、今回はどうなることかと思ったけど……


静香ちゃんが来てくれて、ほんとよかった。

けど、忙しなく働いている姿を見ると申し訳なくなる。


静香ちゃんは、異質な子だ。


初めて話した日、カルチャーショックに近いものを受けた。

多分俺は一瞬で、静香ちゃんに——



「……あ?……って、キャプテンか」



裏側から、風邪で掠れたような聞こえた。



「……和泉?お前なにやってんの?」



頭を傾けて声の聞こえた方を見ると、そこにいたのはユニフォームを着て顔を洗っている生意気な後輩の姿だった。